A5. 子どもの遊び場 ~昔は町全体が保育園~

情報誌を創刊して以来、「もっとのびのびできる子どもの遊び場がほしい」という母親の声を何度も聞いてきた。確かに自分の子育ての中でも、子どもの遊び場にはずっと悩まされ続けている。

昔は、家のまわりに自由に遊び回れる空間があった。ところが今では、ほとんどの道が舗装され、少しでも空いたスペースがあれば駐車場になってしまう。このような状況の中で、外で遊ぶ子どもの数が減ってしまうのも無理はない。経済活動を優先し、便利さを追求した結果、母子やお年寄りの行き場は、どんどん狭められてきている。

公園は数多くあるが、整えられすぎて遊びにくいところや、不衛生過ぎるところも多いようだ。

また乳幼児を持つ母親にとって、子どもの遊び場というのは、単に「子どもが遊ぶ場所」ではなく、自分自身が日常生活を過ごす場でもある。幸い、石川は子育てに先進的な県で、県内各自治体の福祉保健センター、保健所、児童館などにおいて、施設の開放が積極的になされてきている。こういう場所に通ううちに、何でも話せる友人ができた、という人も多い。子どもがのびのびと過ごすためにも、母親が外の風にあたるためにも、母子で家にこもるばかりではなく、こういった施設をどんどん活用してもらいたいと思う。「面積がもう少しほしい」「開放時間が短い」など、課題もまだまだ残されているが、今あるサービスを最大限に使っていくのも、子育て期を乗り切る知恵だと思う。

同時に、大規模な子どもの遊び場というものも、期待されている。お隣の富山県には太閤山ランド、福井県にはエンゼルランドという子供向けの大型施設があるが、これらに匹敵するような遊び場が、残念ながら石川県にはまだない。

戦後日本は、大切なものをたくさん壊してきた、とおっしゃる年配の方がいるが、「子どもの居場所」というのも、その中のひとつにあげられるだろう。

「昔は町全体が保育園のようなものだった」という意見も聞いたことがある。またいつかそんな時代に戻れるときが来るだろうか。壊してしまったものをまた元に戻すには、多大な労力を要する。しかし、現在の状況に危機感を感じ、本当の意味での豊かな生活を取り戻すべく、努力を続けている方々が、各方面にたくさんいらっしゃる。まだまだ日本は大丈夫、そう信じたい。そして、子育て向上委員会としても、何らかのお役に立ちたいと願っている。