地域との結びつき感じたくて
東京・音羽の春奈ちゃん事件(母親同士の心の確執が原因とされる幼児殺人事件)をきっかけに、さまざまなメディアで子育て中の母親が抱えるストレスの実態が取り上げられている。「孤立感」「社会から隔離」。それらの言葉で母親の現状が表現されているが、2年程前の私もちょうどそんな中にいた。
専業主婦になって、初めての土地で初めての子育て。子供はとても愛(いと)しかったけれど、会話らしい会話もせずに、朝から晩まで過ごすのは決して楽しいものではなく、時に苦痛でもあった。
そのころ、唯一社会との結びつきを感じさせてくれたものが、インターネット。「育児」を中心に検索していたところ、あるサイトから他県では母親が自らの手で地域の育児雑誌を発刊していることを知った。「これだ」。金沢には他県出身の母親が多いにもかかわらず、こういった類のものはまだなかった。
大手出版社から全国規模の育児雑誌がいくつか出ているが、本来育児とは地域の中でされるもの。地域の子連れイベント、遊びのスポット、医療機関、公共機関のサービスなど、いろいろな情報を共有し、ネットワークを広げながら、地域社会との接点を保ち続けたい。そんな願いから育児雑誌「子育て向上委員会」は始まった。
「今の母親は子育てが下手だ」「昔より楽なのに甘えている」という意見を聞くことがある。確かにある部分では当たっているが、そればかりではないだろう。母親のみが育児にかかわる現状。一度仕事をやめて家庭に入ると復帰が難しい社会構造。核家族化の上に、近所付き合いのほとんどない、アパート、マンションでの生活。これらの問題をぜひともあらゆる世代の方々に考えていただき、子育て環境の改善、そして「向上」に協力していただけたらと思う。そんな思いも「子育て向上委員会」の名前には込められている。