小さな子どもを取り巻く事件や事故が後を絶たない。児童虐待に関する相談件数も、年々増加していると聞く。
「育児ストレス」、そんな言葉を、もう何百回耳にしたことだろう。深刻な事態にはならなくても、日々の生活の中で、やりきれないストレスと戦いながら子育てをしている母親は、決して少なくはない。
私も娘を産んで最初の半年は、ただただつらい毎日だった。初めての土地でどこに何があるのか分からない。気軽に相談し合える友達もいない。日中はひたすら赤ん坊と2人きりの生活で、大人との会話もない。冬の金沢では、思うように外にも出られない。社会からの隔絶感もあった。充実していた学生時代や会社員時代を振り返っては、専業主婦として置かれている現状に、不安とあきらめを感じていた。子どもの機嫌が悪く、おむつを替えても、授乳をしても、抱っこをしても、泣き止まないときなどは、雪の降りしきる外を見つめながら、途方に暮れたものだ。
当時の私にとって、唯一頼れるものがインターネットだった。ネットの中には、私と同じように育児に悩み、ストレスを抱えている人がたくさんいた。そして、みな相談し合いながら、どうしたら自分らしく子育てができるのかを懸命に模索している。
「3年前に友人と始めた「子育て向上委員会」発行のヒントを得たのもインターネットからだった。子育て中の若いお母さんたちが、力を合わせて地域の育児情報誌を発行していることを、あるサイトから初めて知った。母親の視点がふんだんに盛り込まれた地域の育児情報を、できる限り多くの母親へ。これこそ地域育児支援のあるべき姿なのではないかと素直に感心したものだ。
[私もこんなことをやってみたい」。いつしかそんな希望が私の中に芽生えていた。親しい知り合いもいなければ、編集に関する知識など全くなかったにも関わらず、やる気だけは満々だった。運良く、一緒にやりたいと言ってくれる人もいた。目標が見つかった私は、日々の生活に張り合いができ、次第に子育てが楽しく感じられるようになっていった。取材を通して、地域の情報を手にしたことにより、金沢という街もだんだん好きになっていった。
子育て向上委員会の活動を通して、私は自分自身の居場所を見つけることができたのかもしれない。