人は、うまく行っているときに受けた好意よりも、どん底にいるときに親切にしてもらった経験の方を、より鮮明に覚えているようです。
毎日の生活に疲れているときって、見知らぬ方からの温かい対応が本当に心に沁みるんですよ。
そんなに頻繁に遭遇するわけじゃないですしね。
今でもたまに思い出します。子連れで疲れている私に、優しい言葉をかけてくれた方たちの姿を。
スーパーで褒めてくれたおばさま
エピソードその1。
長女と次女が乳幼児だったころ、私はまだ20代後半でした。
スーパーに買い物に行ったその日は、チビTシャツにかなり短いデニムパンツ、ロングヘアにキャップもかぶっていたので、見ようによってはギャルのような服装でした。
2人の子どもを連れて、カートを押しながら食品を選んでいたとき、見知らぬ5,60代の女性に声をかけられました。
あなた、すごく若いのに、2人も子どもを育ててるの?えらいわね!毎日子育て大変だろうけど、がんばってね!
服装から20歳前後だと勘違いされたのかもしれません。
でも、誰からも褒められないのが普通の毎日の中で、何もかもが思うように行かずにイライラすることばかりの毎日の中で、子育ての先輩であろう女性からの「あなたはえらい、がんばって」という思いがけない励ましの言葉は、とてもとても心強く、嬉しかったのです。
こんな風に見てくれている人がいるんだ、という気づきは、こわばって疲れ果てていた私の心と体を、優しく温めてくれました。
電車で子どもの相手をしてくれたキャリア系女性
エピソードその2。
子どもたちが小さいころは、電車に乗って新潟の実家へ何度も遊びにいきました。ただ、電車に乗っている2時間半という時間が、子連れにとっては難関。
当時はスマホなどなかったので、絵本やおやつを持って、乗車中におとなしくしていられるよう対策を取ります。でもずっと同じ場所に座っていると、だんだん飽きてくるんですよね。
3歳の長女は席から降りようとするし、1歳の次女はぐずり始めます。
周りのお客さんに迷惑をかけないようにと、頭の中はそればかり。大声で叱るのはアウト。泣かせるのもアウト。騒いだらアウト。子どもたちをうまく管理できるか常にびくびくです。
通路を挟んで反対側に座っていたのは、キャリア系の綺麗な女性でした。難しそうな書類を広げて仕事をしています。
「ああー早く着かないかなー(汗)」と気が気じゃない私。
長女は、おかまいなしに、キャリア美女を覗き込んだりしながら、自分の存在をアピールします。
「じっとしてなさい!」と叱る私。
長女に気づいたキャリア美女。
普通ならスルーするだろうに、なんとポストイットを長女に見せて、「一緒にぺたぺたして遊ぼうか?」と言ってくれたんです。
ねぇねぇ、一緒にぺたぺたして遊ぼうか?
普段見ないおもちゃ(ポストイット)に目を輝かせた長女。
その女性は、長女が飽きるまで、遊びに付き合ってくれました。子連れを迷惑がることは簡単なのに、大事な時間を割いて時間を共有してくれたこと。感謝でいっぱいでした。
私の中の「キャリア系の女性=子連れに冷たい」という方程式が完全に崩れました。
後編に続きます。